系統用蓄電池は、ただ電気を貯めて放つだけの設備ではありません。いつ充電し、いつ放電し、どの市場に容量を振り向けるかという運用の巧拙が、収益を大きく左右します。系統用蓄電池は複数の電力市場から収益を得られるのが特徴で、それらを組み合わせて運用することで事業性を高められます。ここでは、代表的な運用方法とその考え方を整理します。
系統用蓄電池の運用の基本となるのが、複数の収益源を積み上げるレベニュースタッキングという考え方です。卸電力市場での売買、需給調整市場での調整力提供、容量市場・長期脱炭素電源オークションでの供給力確保という性質の異なる収益を組み合わせ、蓄電池1台から得られる収益を最大化します。単一の市場に依存しないため、価格変動のリスクを抑えながら収益の安定化を図れる点が強みです。
もっとも基本的な運用が、卸電力市場(JEPX)での価格差取引(アービトラージ)です。1日を30分単位に区切った市場で、価格の安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電して差額を得ます。太陽光の普及により、近年は昼間の余剰で価格が下がり夕方に上がる傾向が強まっており、この値差が収益の源泉になります。ただし充放電には往復で一定のロスが生じるため、実際の利幅はその分を差し引いて考える必要があります。
電力の需要と供給の細かなズレを埋める需給調整市場も、重要な収益源です。この市場は応答の速さに応じて商品が分かれており、応動時間10秒以内の一次調整力から60分以内の三次調整力まで区分されています。蓄電池はミリ秒単位で出力を調整できるため、速い応答が求められる調整力で構造的に有利とされ、火力発電では対応しにくい領域で強みを発揮します。最低入札容量は1MWで、それに満たない場合はアグリゲーター経由で参加します。
将来の供給力を取引する容量市場や、その一部である長期脱炭素電源オークションは、原則20年間にわたる固定的な収入をもたらす運用先です。落札した容量に応じて収入が確定するため、変動の大きい市場収益の下支えとなり、長期の事業計画を立てやすくします。一方で、他市場で得た上振れ収益の大部分を還付する仕組みがあるなど、制度に沿った運用が求められる点には留意が必要です。
これらを組み合わせた典型的な運用は、時間帯ごとに次のような形になります。
アービトラージ用の充放電と、需給調整市場向けの調整余力を同時に確保するため、充電状態(SOC)をどの水準に保つかを緻密に設計することが運用の鍵になります。近年はAIで各市場への最適な入札計画を自動立案するサービスも登場しています。
運用方法には、自社で運用する形と、専門のアグリゲーターに委託する形があります。自社運用は収益を手元に残しやすい一方、高度な予測・制御を行うシステム(EMS)の構築と専門知見が必須で難度が高くなります。アグリゲーターへの委託は、複雑な市場取引や遠隔制御を専門家に任せられ、中小規模でも安定した収益化を目指しやすいのが利点です。自社の体制や設備規模に応じて、最適な運用体制を選ぶことが重要です。
収益機会が多い一方で、運用にはいくつかのリスクが伴います。市場価格の変動が大きく予測精度が収益を左右すること、需給調整市場の商品要件や出力制御ルールなど制度が改定途上にあること、深い充放電や高温環境が電池の劣化を早めることなどです。また、同じ容量を同じ時間帯に複数市場へ二重に提供することはできないため、限られた容量をどの市場にどれだけ振り向けるかの最適配分が、運用の成否を分けます。
系統用蓄電池は、卸電力市場でのアービトラージ、需給調整市場、容量市場・長期脱炭素電源オークションという複数の収益源を組み合わせて運用します。時間帯ごとの充放電やSOCの設計、市場への容量配分といった運用の巧拙が、そのまま事業の収益性に直結します。
高度な運用には専門的な知見とシステムが欠かせません。安定した収益を実現するためにも、用地の確保から系統連系、アグリゲーターやO&M事業者と連携した運用体制の構築までを一貫して支援できる専門企業を比較し、自社の事業計画に合ったパートナーを選ぶことをおすすめします。
系統用蓄電池事業では、事業フェーズごとに求められる専門性が異なります。支援会社によって対応範囲も異なるため、フェーズに合わない会社に依頼すると、対応できない工程は別の会社を探すことになり、事業化が遅れる原因になります。
だからこそ、事業フェーズに合った支援会社を選ぶことが重要です。
当メディアでは、用地選定・設計施工・運用の各フェーズに適した支援会社を紹介しています。各社の特徴を比較し、適したパートナー選定にお役立てください。
