系統用蓄電池は、電力系統の安定化に貢献するインフラであると同時に、複数の電力市場から収益を得られる投資対象でもあります。ここでは、電力系統・社会にとってのメリットと、事業者・投資家にとってのメリットの両面から整理します。事業参入を検討するうえでの判断材料としてご活用ください。
系統用蓄電池の導入は急速に拡大しています。全国の契約申込み容量は2025年9月末時点で約2,400万kWに達し、前年比で約3.9倍に増加しました(※1)。再生可能エネルギーの拡大に伴う出力変動への対応に加え、需給調整市場や容量市場といった新しい取引市場が本格稼働したことが、こうした関心の高まりを支えています。
太陽光や風力は発電量が天候に左右されるため、供給が需要を上回ると発電を止める出力制御が発生します。系統用蓄電池は余剰電力を貯めて必要な時間帯に放電することで、本来は捨てられていた再エネ電力の有効活用と出力制御の回避に貢献します。実際に九州電力の事例では、1日あたり最大30万kWh相当の再エネ出力制御を回避する運転が確認されています(※2)。
電力は需要と供給を常に一致させる必要があり、バランスが崩れると周波数が乱れて停電リスクが高まります。系統用蓄電池は電力が余った時に充電し、不足した時に放電することで、秒単位で変動する需給バランスを吸収し、周波数を一定に保つ調整力として機能します。
送電容量が逼迫する地域では、蓄電池が電気を一時的に貯めることで系統混雑を緩和し、送電網増強のコストを抑える効果が期待されます。さらに、災害などで停電が起きた際にも、貯めた電力を供給してレジリエンスを高める役割を担います。
系統用蓄電池は、卸電力市場・需給調整市場・容量市場という性質の異なる3つの市場を組み合わせて収益を得られる点が大きな強みです。安い時間帯に充電して高い時間帯に売電する取引に加え、調整力の提供や供給力の確保に対しても対価が得られます。こうした複数市場を使い分ける運用はレベニュースタッキングと呼ばれ、単一市場への依存を避けながら収益の安定化を図れます。
容量市場の一部である長期脱炭素電源オークションでは、原則20年間にわたる容量収入を見込みやすい仕組みが整えられています。長期の収益見通しが立てられることで、大規模な初期投資を伴う事業計画でも資金計画を組み立てやすくなります。
固定価格買取制度(FIT)に頼らず、市場価格に連動して収益を得る事業モデルを構築できる点もメリットです。脱炭素社会への貢献はESG評価の向上にもつながり、投資対象としての魅力を高めています。
収益機会が多い一方で、系統用蓄電池事業には事前に押さえるべき条件もあります。設備費や工事費、土地取得を含む初期投資が大きくなりやすいこと、系統連系の申請から完了まで数年を要する場合があること、市場価格や制度改正の影響を受けることなどです。メリットを最大限に引き出すには、これらのリスクを織り込んだ事業計画が欠かせません。
系統用蓄電池は、再エネの有効活用や需給バランスの維持といった社会的な役割と、複数市場を組み合わせた収益化という事業上のメリットを併せ持つインフラです。導入が急拡大している背景にも、この両面の価値があります。
一方で、初期投資の大きさや系統連系の長期化など、事業化には乗り越えるべき課題も存在します。メリットを確実に収益へつなげるためにも、用地の確保から資金調達、電力申請、運用までを一貫して支援できる専門企業を比較し、自社の計画に合ったパートナーを選定することが重要です。
系統用蓄電池事業では、事業フェーズごとに求められる専門性が異なります。支援会社によって対応範囲も異なるため、フェーズに合わない会社に依頼すると、対応できない工程は別の会社を探すことになり、事業化が遅れる原因になります。
だからこそ、事業フェーズに合った支援会社を選ぶことが重要です。
当メディアでは、用地選定・設計施工・運用の各フェーズに適した支援会社を紹介しています。各社の特徴を比較し、適したパートナー選定にお役立てください。
